戸板峠と七ヶ岳林道

河之邊 浩

今日も朝から晴天に恵まれる。 本日のメインは悪路で有名な多々石林道戸板峠。 駒止トンネルができてからは更に荒れていることだろう。 時間と体力が余れば七ヶ岳林道経由で田島寮まで戻る予定。 戸板峠は初めて行くので気分も乗り気である。 さっそく朝食をとってから 9:00 に出発する。

まずは狭くてまっすぐな砂利道をノーブレーキで下っていく。 結構大きい石がごろごろしているので 36km/h くらいしかでない。 この道のもう一本北側の富貴沢の下りは 未舗装とはいえ整備が行き届いておりまっすぐなので 軽く 50km/h は出ていた。 もちろんフロントサス付き下り専用マシンの MTB であれば もっと速いであろう。 などと考えていると、農家の裏に出る。 ここではいつも 2 匹の犬がバウバウ吠えて出迎えてくれる。

ここからは大川ぞいに舗装された真新しい農道が R289 までつづく。 勾配はほとんどない。 やや向かい風ではあるが快調に飛ばしていく。 ほどなく R289 にでるのでここは左折してまずは駒止トンネルを目指す。 戸板峠だけならば会津田島駅を起点・終点にしても 十分こなせるコースであろう。 先に多々石林道を登って戸板峠でランチタイムという手もあるが、 今回は楽しみはあとにとっておくことにした。

途中、七ヶ岳林道やあとで戻ってくるであろう 多々石林道の分岐を確認しながらじわじわと舗装の登りが続くので なかなかはかどらない。 交通量も土曜日とあって行楽客が多めで少しうんざりする。 台鞍山スキー場ではパラグライダーが山野を背景に目立っていた。

10:40 にようやく駒止トンネルの入り口にさしかかる。 あきれたことに近くには駒止峠標高 943m の立派な道票が建っていた。 まあ、峠と言っても問題ない地形でもあるし、 過去に訪れた旧駒止峠は標高 1130m 程度でたいして変わらないので、 あまりあきれてもしかたがないのかもしれない。

冷涼で気持ちの良いトンネル(延長 2010m)を抜けると、ここから 山口の集落までは軽いダウンヒルである。 結構スビードがでるが帽子が飛ばされないように遠慮しながら 走ったので 58km/h くらいしかでない。 今日はダートが多いから空気圧をやや低め(3.5atm)に設定し ていることも効いているのだろう。

最後に短いトンネルをくぐると山口の集落だ。 ここが今回の最低地点で標高 520m である。 戸板峠までは約 800m の標高差を稼がなくてはならない。 とにかくここを左折して多々石林道入り口までだらだらと登っていく。 そして 11:40 ころ多々石林道にはいる。 多々石とはいっても本当に石が多いかどうかはわからないが、 悪路であることは覚悟する。

舗装路を 6km 走るとといきなり工事中になり、 最近はやりのTシャツでおなじみのCATのショベルカーが止めてあった。 私は流行以前から本家CATのほうを良く知っているので 初めてこのTシャツを街でみたときには、 笑いを押さえるのに苦労したものだ。 研究柄、CAT の作業服だの帽子だのが身の回りに結構あったりする。

それが過ぎると森の中のいかにも林道という道になり、 雰囲気は頂点に達する。 しかし近くには畑が開けていたり、 農場や小屋があったりしてどことなく人間臭い。 峠まで食事は我慢しようと思っていたが、 さすがに疲れておなかが減ってきたので道端で食事にする。 今日は時間が苦しいのでビスケットが中心でややものたりない。 でも寮に帰ると食べ切れないほどの大ごちそうがでるし、 フルーツポンチの缶詰という切り札がザックの中で 待っていてくれるので、13:15 には走行を再開する。

自動車はまったくこない。 オフロードのバイクが 2 台通っただけである。 最後のつづらが巻く部分は上が見えてしまい、 「エー、本当にあんな高いところまで登るの?」と思ってしまうが、 登ってしまってから今来た道を振り返ると 信じられないほど登ってきているように感じられるのは毎度のことである。 体力を温存するために押したり乗ったりして 13:58 ようやく 戸板峠に到着する。 こちら側の道は思った程の悪路というほどのものでもなかった。

峠からは戸板林道が北方に伸びているが、 どこに抜けるかまでは確認できなかった。 結局ダートの登りは 4km に及んだ。 下りは R289 まで 6km 全部ダートなので、 このコースのほうがダートの下りを長く楽しめるであろう。

少々休んだあと 14:10 に下り始める。 こちら側は大きな石がごろごろしており非常に走りにくい。 途中巨岩が道をふさいでおり、自動車は通行不可である。 どうりで道が荒れているわけだ。 難なく通過していくが、路面からの振動で腕がぶるぶるとマッサージされる。 スピードを落とせばいいと思ってもブレーキを引く握力がつづかない。 しかたなく途中で休憩してボトルの水を飲んだり して R289 には 14:40 に無事に着いた。 途中会ったのは R289 が近いところでの山菜とりのおじさんのみ。

ここからは七ヶ岳林道入り口まで少し下る。 この時間だと寮に帰るのはぎりぎりになるかな、 と思いやや焦っていたのか下り過ぎてしまった。 気をとりなおして「広域基幹林道七ヶ岳線」入口を 14:57 に通過する。 もちろん最初からダートであるが、幅は 6m とやや広くなっている。

七ヶ岳を下山してきたであろう何人かの 山屋とすれちがいながら進んでいく。 勾配はゆるいし道も良いのでどんどん走っていく。 戸板峠の充実感を思い出しながら、今日も一日良く走ったと思う。

日も傾いた 16:28 下岳登山道との交差点に着く。 ここで最後の休憩をして、フルーツポンチを食す。 七ヶ岳の稜線はガスってきているので 16:44 に早々と支度をして下山する。 このまま林道を行くのも面白くないので、下岳登山道を下ることにする。

この登山道は石が多いという事前の情報もあり無理かとも思ったし、 実際3箇所で自転車を引きずり降ろすところがあったが、 それ以外は登山道にしては勾配がゆるいのでだいたい7割は乗車できた。 でも沢筋だったので慎重にコースをとった。 もっとうまい人は岩の段差なども難なく乗車できるだろうが、 まだ自転車は新車ということもありやや遠慮して走った。

そういうわけで 17:02 にやっと電波塔からの林道に合流した。 あとはえぐい林道をガンガン下っていく。 地図では途中から二重線の道になってはいるが、 西沢口の建物のあるところまでは全部ダートである。 舗装になって少し走ると田島寮への登り道が左に分岐する。 こちらの登り道もダート。 つかのまの舗装を離れてゆっくりと登っていく。 送電線の少し手前で右に曲がればもう田島寮。

17:25 到着で明るいうちに帰れた。今日はハードだった。


走行データ

参照五万図

参照二万五千図

この紀行文は平成 6 年 7 月、ネットニュース fj.rec.bicycles に投稿した記事に若干の加筆修正を加えたものです。


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